2025年11月13日

高効率設備導入によるメリット Vol.2

設備の省エネ改修とは

建築物の設備を改修することは、単なる老朽化対策ではありません。それは、コスト削減、快適性の向上、そして地球温暖化対策に貢献する未来への投資です。
特に空調や照明、給湯といったエネルギー消費の大きな設備を最新の機器に更新することは、脱炭素社会の実現に大きく貢献します。本記事では、高効率設備を導入することによる主なメリットについてご紹介します。

コストと環境を守る(高効率空調)

空調は、施設全体のエネルギー消費の大部分を占めています。古い空調を最新の高効率空調に切り替えることで、消費電力を大幅に削減できるため、電気料金の削減に直結します。さらに、単なる冷暖房効率の向上にとどまらず、快適性と衛生面でも大きなメリットがあります。

・全熱交換器で換気対策

近年、ウイルス対策としての換気の重要性が高まっていますが、夏の暑い日や冬の寒い日などの室外と室内の温度差が大きい日に換気をした際、室温が大きく変動して不快に感じたことはありませんか?
全熱交換器は、換気時に外へ捨てる空気の熱(温度と湿度)を回収し、室内に取り込む空気に移す機器です。これにより、換気による室温の変化を最小限に抑え、快適な室温を保ちながら効率的な換気が可能になります。エネルギーロスを抑えることは、空調の再稼働コストを削減することにもつながります。
ビルリノベ事業では全熱交換機の更新も支援していますので、これから寒い冬が訪れる前の季節の変わり目のタイミングに一度ご検討してみてはいかがでしょうか。

・空気質の改善により快適性向上

最新の空調設備は、PM2.5や花粉、ウイルスなどを除去する高性能フィルターを搭載しているものが増えています。また、湿度を適切に保つ湿度制御機能も備わっているため、夏場のジメジメや冬場の乾燥を防ぎ、一年を通して快適な空間を実現することができます。高効率な設備に更新することで故障リスクが減り、突発的な修理費用やメンテナンスコストの低減にも貢献します。
高効率空調の改修例については、別途改修イメージの記事を掲載しておりますので、ぜひ下記よりご覧ください。

改修イメージ)

賢く照らして省エネを極める(制御機能付きLED照明)

LED照明は、省エネ性能の高さからすでに広く普及しています。しかし、LED照明からさらに進化した制御機能付きLED照明は消費電力が少ないだけでなく、無駄な点灯をなくすことで、電気代の更なる削減を実現します。
※制御機能付きLED照明とは、照明制御器とLED照明器具の組合せ、もしくはセンサ付きLED照明器具により自動的に調光や点滅することで省エネを図るものを指しております。

・蛍光灯は販売中止に

環境規制により一部の蛍光灯はすでに製造・販売が終了しており、今後はさらに対象が拡大する予定です。そのため、蛍光灯はさらなる値上げと品不足が予想されます。LED照明も材料価格の高騰で値上げが予想されるため、今後のメンテナンスやランプ調達コストを考えると、早めのLED照明への切り替えがおすすめです。
※「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議(COP5)」の決定により、一般照明用の蛍光ランプをその種類に応じて、2025年末から2027年末までに製造及び輸出入を段階的に廃止 することが決定されています。

■白熱電球と電球型LEDランプのコスト比較例

年間光熱費(改修前後)

・用途に合わせて明るさ調整

自動制御とスケジュール制御で無駄をなくす 調光制御機能を使えば、人感センサで人の動きを検知して不要な点灯をなくしたり、照度センサで外の明るさに合わせて光量を自動調整することができます。
さらに、スケジュール制御も可能です。これは、曜日や時間帯ごとに照明の点灯・消灯や明るさをあらかじめ設定する機能です。たとえば、オフィスでは勤務時間に合わせて会議中は明るく、休憩中は少し暗くする等、照明を自動でオン・オフにすることで、照明にかかる無駄な電力消費を大幅に削減できます。

・LEDの再導入で補助金を活用

「うちの照明はもうLEDに変えたから関係ない」と思っていませんか?実は、LEDが出始めた頃に導入された初期のLED照明器具は、現在の製品に比べて効率が劣るものが少なくありません。
一般的に、最新のLED照明の消費電力は、約10年前の初期LEDと比較して、同等の明るさでも約50%程度まで抑えられています。LEDは技術革新のスピードが速く、数年で格段に効率が向上しているため、古いLEDを最新のLED照明に再改修することで、さらなる省エネ効果が期待できます。LEDは寿命も長く、ランプ交換の手間と費用の削減にも大きく貢献します。
また、脱炭素ビルリノベ事業では、LED照明器具から高効率設備への更新を支援しているため、費用を抑えて改修を行うチャンスです。

給湯の効率化が脱炭素の鍵(高効率給湯器)

給湯もまた、エネルギー消費の大きな部分を占めます。特に福祉施設や病院、ホテル等、大量のお湯を必要とする施設にとって、給湯にかかるコストは無視できません。

・特にヒートポンプ給湯器をおすすめしたい建物

下の表は、ヒートポンプ給湯器とガス給湯器の違いを比較したものです。
従来のガス給湯器がガスの燃焼によって必要な時にお湯を沸かす「瞬間式」であるのに対し、ヒートポンプ給湯器は、空気中の熱をくみ上げてあらかじめお湯を貯めておく「貯湯式」です。そのため、ヒートポンプ給湯器は、ランニングコストとCO2排出量において優位性があります。
なお、ヒートポンプ給湯器単体での導入では、貯湯量を上回るピーク需要時にお湯切れを起こすという注意点がありますが、ガス給湯器とのハイブリッドシステムを導入することで湯切れリスクを回避できます。ハイブリッドシステムは、通常時は高効率のヒートポンプが、突発的なピーク需要時にはガス給湯器が補助を担うことで、湯切れリスクを抑え、快適性と経済性を両立させます。
したがって、「カーボンニュートラルへの貢献を経営の柱にしたい企業」、「給湯コストの削減効果が最も高くなる施設(ホテル、病院、老人ホームなど)」には、初期投資を回収した後の長期的なコストメリット(ランニングコストの低減、CO2排出量の大幅削減など)により、ヒートポンプ給湯器(ハイブリッドシステム含む)への改修を強くおすすめします。

■ヒートポンプ給湯器とガス給湯器の比較

ヒートポンプ給湯器とガス給湯器の比較

まとめ

空調、照明、給湯といった設備の改修は、それぞれの分野で省エネと快適性を向上させるだけでなく、それらの積み重ねが大きな脱炭素効果を生み出します。
脱炭素社会の実現は、企業や個人の努力なしには成し得ません。設備の高効率化は、そのための第一歩であり、環境負荷を減らしつつ、経済的なメリットも享受できる賢い選択です。
脱炭素ビルリノベ事業では、全熱交換機やLED照明器具、給湯器だけでなく、外皮の断熱改修費用も補助対象となっております。外皮性能の向上によるメリットも見込めるため、ぜひ補助金の活用をご検討ください。