2025年09月30日

「光熱費削減」だけじゃない!
ビルの改修がもたらす健康メリット

人も建物も、『ZEB』化改修で健康に。

近年、地球温暖化による気候変動の影響で猛暑日や35℃以上といった言葉が日常的に聞かれるようになり、夏の暑さに驚くことが少なくなりました。気象庁の発表によると、2025年6月から8月の平均気温は平年を2.36℃上回り、1898年の統計開始以来、最も高い値となりました。この厳しい暑さにより、全国の熱中症による緊急搬送人員は過去最多水準に達しています。このような猛暑が「災害」ともいえる状況において、熱中症を引き起こす可能性のある環境では、空調設備の適切な運用をはじめ、建物内にいる人々が安心して過ごせる環境づくりを徹底することが重要です。
また、冬場においても、温湿度の低下はインフルエンザなどのウイルスの活性化を招き、感染症の増加につながります。
このような気候変動の影響下において、既存建築物における利用者の健康・快適性を向上させる『ZEB』化改修の取り組みは、単なる建物のエネルギー消費量の削減にとどまらない、重要な意義を持つようになっています。本記事では、既存建築物の外皮性能向上、省エネ型設備への更新といった改修が、いかにして建物の快適さを生み、利用者の健康維持に貢献するのかについて、ご紹介します。

2017年から2025年までの熱中症による救急搬送人数と、夏(6月〜8月)の平均気温偏差の推移

*2025年の熱中症による救急搬送人員には速報値を含みます。

外皮性能の向上(断熱材・窓の改修)

従来の建築物では、夏は窓際が暑く、冬は窓際が寒いといった温度ムラが発生しがちでした。外壁や屋根の断熱材を高断熱化し、窓を高性能な複層ガラスや二重サッシに交換することで、外部の熱の影響を最小限に抑え、室内の温度を均一に保ちます。これにより、窓際で過ごす人の暑さや寒さによるストレスが軽減され、集中力の維持や熱中症をはじめとした体調不良の予防につながります。また、窓を改修して結露を減らすことで、カビやダニの繁殖を抑えられます。カビの胞子やダニの死骸などは、ぜんそくやアトピー性皮膚炎といったアレルギー症状の原因となり得ます。窓改修によって結露を防ぐことは、これらのアレルゲンを減らし、利用者の健康を守ることにつながります。
以下のデータは住宅を対象とした研究結果ですが、断熱性の高い住宅に転居した人の多くが、疾病を減らし、健康維持につながっていると考えられます。
多くの既存建築物は、新築時と比較して断熱性能が不十分な場合が少なくありません。しかし、『ZEB』化改修で外皮性能を向上させることで、既存建築物においても新築と同等の断熱性能を実現できます。

転居前と転居後の有病割合(%)

省エネ型設備への更新

最新の空調設備は、単に温度を調整するだけでなく、換気機能や空気清浄機能を備えているものが増えています。高効率な換気システムを導入することで、室内の汚れた空気を効率的に排出し、新鮮な外気を取り込むことができます。
これにより、室内の二酸化炭素濃度やハウスダスト、花粉などのアレルゲンの濃度が低下し、利用者の呼吸器系の健康維持に貢献します。インフルエンザなどのウイルスが活発化しやすい冬場でも、適切な換気により感染リスクを低減することができます。
また、従来の給湯器から高効率の給湯器に交換することで、消費エネルギーを抑えるだけでなく、湯切れリスクを低減し、安定したお湯の供給が可能になります。
これにより、適切な温度のお湯が使えるようになり、冬の寒い時でも手洗いに対する抵抗感がなくなり感染症予防にもつながります。
空調や換気設備の更新により室内環境を改善し、利用者や従業員が健康を保てるようになった改修例については、別途改修イメージの記事を掲載しておりますので、ぜひ下記よりご覧ください。

まとめ

外皮の改修や設備の更新は、個々の対策だけでも効果を発揮しますが、組み合わせることで相乗効果が生まれ、建物全体の温熱環境と健康・快適性が飛躍的に向上します。単なるエネルギー消費量の削減にとどまらない、利用者の健康と快適性を重視した建物へと生まれ変わることで、建物の価値向上にもつながります。
脱炭素ビルリノベ事業では、外皮の断熱改修費用や高効率設備の導入費用が補助対象となっておりますので、ぜひ補助金の活用をご検討ください。